第17回 上達への道

 

 すこし前から1月の中旬にかけて、私事で時間がとられ毎日の練習が思うように任せぬ時期があった。習慣としての日々の練習が思うようにできなかったのである。プロの演奏家として、よほどのことがない限りギターを手にしない日はない。だがこのときばかりは練習がままならない出来事が生じ長引いていた。先月ようやく解消し練習に向かうことができるようになり、久しぶりにギターを弾いた。

全てが新鮮でその音色の煌めきに胸が高鳴った。ギターが弾けることの嬉しさ、楽しさ、有り難さがしみじみと心に沁みた。

それまで、”不本意な出来事” と感じていたが、この事がギターへの更なる想い、深く限りない魅力に気づかせてくれたことになる。その意味で、実は "有り難い経験” であったといえる。「目の前に起きる出来事は、すべて意味がある。」というわけだ。

 

 「ギター上達」への道は、目の前に起きる出来事やギターへの気持ちを「全肯定」し、目標に向かって踏み出すところから始まる。「私はこんな音が好きだ。この音色はどうすれば出るのだろう。」「心に沁みる演奏がしたい。どのように弾けばいいのだろう。」ギターに向かう自分の思い(目標)が明確になると、演奏の聴き方や見方が変わってくる。

自分の出す音色や演奏の仕方にこだわりが生まれ、”はっと驚く” 心が育つようになる。その "はっと驚く” 気づきが大事なのである。胸に浮かんだ小さな気づきを大切に持ち続け、自分なりに工夫し、「一つ一つ」「コツコツ、コツコツ」と積み上げていく。

技はそうやって磨かれていくものだ。

これらのことは、「好き」でなければ続かない。「好き」だからこそ気持ちを「全肯定」して、何年も学び続けることができるのだ。

「好き」に浸る勇気を持とう。そして、繰り返す日々の練習と新鮮な気持ちで向き合い、楽しい時間を持って欲しい。

 

 私の場合、それは「セゴビア」であった。今でも、セゴビアについて新しい発見や気づきがある。弾いているのはまぎれもなく吉本なのだが基礎基本は,「セゴビア」であり、その研究は今も続いている。

2月21日(日)には、第3回ギター演奏研究講座「セゴビア奏法の基礎」を用意している。興味のある人は、「日本ユニバーサルギター協会」で受付けているので開いてみて欲しい。→こちら

一歩を踏み出した者だけが、本物の気づきを掴むのだ。

                                             2016.02.01

                                             吉本光男